こんにちは。
丸田ししゅうの丸田です。
早いものでもう12月になってしまいました。
2021年もあと1ヵ月と思うと時間の流れの速さを感じますね。
私が年をとっただけかもしれませんが。笑
2021年の締めくくりとしてのテーマはワッペンについてです。
ワッペンを作りたいという方からの依頼は多いのですが
仕様によってワッペンにも長所短所があり、直接刺しゅうをお勧めすることもあります。
その逆もまたしかりで、直接刺しゅうを希望していたけど
ワッペン製作を勧めることもあります。
今回はそんなワッペンと刺しゅうの違いについて説明していきたいと思います。
ワッペンとは
直接刺しゅうはある程度イメージがわくと思いますが
ワッペンについて改めて詳細に説明します。
ワッペンは専用の生地に刺しゅうを入れてカットすることで
刺しゅうの質感をもったデザインを小分けしたものになります。
小分けになっているものをご希望の衣類や雑貨に取り付ければ
刺しゅうに加えて生地の厚み分の立体感をプラスすることができます。
当社の接着糊は業務用の強力なものなので
家庭用のアイロンでも簡単に接着することができます。
また納品時に接着の際の説明書きは同梱しています。
また、ワンポイントの刺しゅうであっても、例えばパーカーやジャケット等に加工をする場合
ボディの移動で輸送コストがかかってしまったりするデメリットがありますが
ワッペンであれば軽いので、取付けの技術や設備をお持ちの方であれば
送料を抑えることができるというメリットがあります。
周囲を熱で溶かしてカットする為、必ず2mm程の縁が入る点が特徴です。
クオリティについて
まず直接刺しゅうの場合、薄い生地や伸び縮みするような生地は一般的に不向きとされています。
針を入れる際にどうしても生地の影響を受けてしまい
生地に穴が空いたりデザインが歪んだりする可能性がある為です。
特に帽子に直接刺しゅうを入れる場合は、帽子のカーブの影響が顕著で
やはり歪みや柄ズレの原因になり、ものすごく細かいデザインの場合は再現度が下がってしまいます。
その点、ワッペンは原反枠と呼ばれる平らな面にワッペン専用の厚みのある生地を使用するので
同じ柄でも帽子に直接刺しゅうを入れるより、ワッペンの方が刺しゅうの品質や
デザインの再現度は上がります。
刺しゅうのクオリティを最重要視するのであれば
Tシャツやパーカーに直接刺しゅうをするよりもワッペンを製作して
アイロンまたは縫製ミシンで取り付ける方が良いと言えるでしょう。
デザインについて
直接刺しゅうをするのかワッペンを作るのか迷っているという相談を頂くこともあります。
判断基準は様々ですが、こちらではデザイン面でどちらをお勧めするかについてお話していきます。
①ベースに色を付ける場合
まず初めに見るポイントはデザイン部分の背景に色を付けるかどうか、という点です。
左の画像に注目してください。
円の中が全て青で埋まっています。
これを直接刺しゅうでやろうとすると青色の糸で埋める面積が非常に大きくなり
薄いTシャツなどは生地が引っ張られてカチカチになり、シワもものすごく多くなることが予想されます。
ロゴデータ入稿の時点でこのように色の塗りつぶしが多い場合は
ワッペンを提案させて頂くことがほとんどです。
②縁取りが細かい場合
次に右の画像に注目ください。
こちらもベースに色が付いているので①の条件に当てはまりますが
さらに縁取りのあるイラストのデザインになっています。
こういうデザインの場合、前述の通り平らな面で厚めのワッペン生地の方が
デザインの再現度は向上します。
仮に帽子にこのデザインを入れたいというご要望があったら
おそらくあまりキレイには出ないですと正直にお伝えすることになるでしょう。
Tシャツやポロシャツでも同様で、同じ版で製作をしても
縁がずれたり、目がキレイに出るものと出ないものと個体差が出ることは間違いないかと思います。
ただこちらはサイズを大きくしたり、縁取り部分を太く調整したりして
解決できることも多いので、アニメにキャラクターなど
何をおいても再現度を重視したいという場合にはワッペンの方が良いと思います。
価格について
こちらもよく聞かれますが、直接刺しゅうとワッペンだったらどっちの方が安くできるのかという点です。
結論から言うと、取付を当社で行う場合はワッペンの方が高くなる場合がほとんどです。
ワッペンだけ納品の場合とボディに直接刺しゅうの場合を比べるならば、条件により変わってきます。
この理由について詳しく解説していきます。
まずTシャツやパーカーなどのボディに直接刺しゅうする場合
どのような流れで作業を行うかというと
①ボディを箱から出す
②刺しゅう箇所に印をつける
③枠を張る
④機械に置く
⑤刺しゅうを入れる
⑥機械から外す
⑦印を水で消す
⑧裏側の糸で、長いものをハサミで切る
⑨キレイに畳む(依頼があれば袋に個包装する)
という手順をボディ1着につき行う必要があります。
つまりTシャツ30着に刺しゅうを入れるとすれば
①~⑨→①~⑨→①~⑨という工程を30回繰り返すことになります。
仮に5文字程度のネーム刺しゅうをするとして、この工程を
初めから最後まで30着分加工するのに2時間程度で行います。
ではワッペンの場合はどうでしょうか。
①生地を用意する
②必要な枚数分のサイズにカットする
③生地を機械に張る
④刺しゅうを入れる
⑤生地を外す
⑥裏側の糸で、長いものをハサミで切る
⑦裏側にアイロン接着芯を貼り付ける
⑧コテでヒーターカットする
⑨まとめて袋入れする
工程の流れとしては
①~⑦→⑧×30→⑨
という流れになります。
一度枠に貼って必要枚数分の面付けしてしまえば
あとは機械が動いてくれるので人の手で作業する箇所はそう多くありません。
つまり価格を抑えられるということになります。
上記をまとめると
枚数が多い場合、ワッペンの方が安く、直接刺しゅうの方が高い
と言えるでしょう。
逆に枚数が少ない場合、ワッペンには生地代やヒーターカットの作業代も含まれますので
割高になってしまいます。
縫付とする場合にはさらに縫い付け代もプラスになるのでさらに割高になります。
いかがだったでしょうか。
ただ高くてもワッペンが良いという方もいますし、ワッペンより直接刺しゅうの方が良いという方もいますので
あくまで判断材料として情報を提供できていれば幸いです。
最後に。
何枚からワッペンの方が安くなる、といった詳細に関しては仕様により異なりますので
興味のある方はフォームよりお問い合わせ下さい。